SF&Fantasy

個人的に名作だと思っているSF・ファンタジー作品を語ってみる。

対照的な終末論「トリフィド時代」と「渚にて」

古典SFでよくある終末ものの王道は「異種族侵略」で最も有名なのはウェルズの「宇宙戦争」でしょうが、私はあえてウィンダムの「トリフィド時代」をオススメします。

ある日、人類の大半が失明してしまった世界で、動く巨大な食人植物トリフィドによって人間がどんどん襲われていくストーリーは、まさに古き良きパニックSFですね。

目が見えている一部の人間が支配階級になっていく過程、盲目の人々が主にとなっていく現実の残酷さ、疫病の流行、社会システムの崩壊など、じわじわと追い詰められていく人類の姿は緊迫感がありますよ。

そんなパニック系が目立つ終末系SFの中でも「静かな終わり」を持つ作品が「渚にて」です。

核戦争により滅びるのを待つばかりの地球で、まだ放射能の届いていないオーストラリアに住む人々、たまたまたどりつけたアメリカの潜水艦の人々が、迫り来る最後を待つように日々を過ごす物語です。

無意味に逃げることもなく、殺しあうこともなく、静かに終わりを過ごし、自分なりの「最期」を選ぶ人々の姿は、不思議と悲壮感がありません。

アメリカに残した妻子を思うドワイトに恋をしたモイラの最期の純愛と、その結末も味わい深い余韻を残すものとなっています。