SF&Fantasy

個人的に名作だと思っているSF・ファンタジー作品を語ってみる。

日本の日常的ファンタジー

現実的な日常に混ざりこむ不思議な話は「エブリデイマジック」と呼ばれています。

日本にはそういった「少し不思議」な話が多数あります。

ひとつめは浅田次郎の「椿山課長の七日間」。

急死してしまった中年サラリーマンが、特に大きな犯罪も犯していないのに罪人扱いされたことに納得いかず、美女の姿を借りて七日間だけ現世に戻って自分が犯した罪と向き合う、という内容。

戻るのは椿山課長だけではなく、面倒な掟も守らねばならず、そして意外な「罪」の真相もあり……とテンポ良くコミカルに書かれています。

最後の1日から死者の世界でのラストまでの流れは、切なくも優しいものです。

もうひとつご紹介するのが日常的な不思議な話を集めた荻原浩「押入れのちよ」です。

分類的にはホラーなのですが、ちょっと切ない話やシニカルな話の方が多いですね。

表題作は押入れにすみついている幽霊のちよと、失業した男の心温まる交流を描いた物語です。

「コール」は真相がわかった瞬間にじわりとなきたくなるような、そんな不思議なお話ですので、ぜひ読んでみてください。